毎年、オフシーズンになるとFA(フリーエージェント)権を活用して移籍する野球選手の話題で盛り上がりますよね。野球におけるFA権とは、いずれの球団とも選手契約を結ぶことができる権利を意味します。本日はFA権について詳しく解説します。
(1)国内FA権と、海外FA権の2種類がある
(2)国内FAと海外FAの取得条件
(3)FA権を行使するには?
(4)再FA権を取得するには?
(5)FA宣言した選手の翌シーズンの年俸は現状維持が上限だが…?
(6)獲得した選手によっては移籍に関わる補償が発生する
(7)海外FAにおける補償など
(1)国内FA権と、海外FA権の2種類がある
FA権は国内FAと海外FAの2種類があります。国内FAはNPBの12球団が対象ですが、海外FAはMLBなど海外の球団も視野にいれて選手契約が結ぶことができます。
(2)国内FAと海外FAの取得条件
国内FA権を取得するには8シーズン、海外FA権を取得するには9シーズンの出場選手登録日数が必要です。1シーズンのカウント方法ですが、145日以上1軍に選手登録されれば1シーズンとしてカウントされます。故に代打の切り札や、守備硬めの選手達も普通にFA権を取得することができます。
仮に怪我などで1軍に60日しか選手登録されなかったシーズンがあったとしても、85日以上出場しているシーズンがあれば合算されて1シーズンとしてカウントされます。
また怪我をしてしまったも故障者特例措置を活用すれば最大で60日が補填されるので、1シーズンとしてカウントすることができます。条件は前シーズンの出場登録日数が145日を満たしていることです。2018年は金子千尋投手が故障者特例措置を活用して、FA権取得の条件を満たして話題を集めました。
(3)FA権を行使するには?
取得したFA権を行使するに日本シリーズ終了の翌日から土・日・祝を除く7日以内にコミッショナーで文章にて申請する必要があります。その後、8日目の午後3時にコミッショナーからFA宣言ん選手として公示され、翌日から契約交渉を行うことが可能になります。
(4)再FA権を取得するには?
FA権の再取得は宣言残留、移籍問わず4シーズン後です。
(5)FA宣言した選手の翌シーズンの年俸は現状維持が上限だが…?
FA宣言した選手の翌シーズンの年俸は現状維持が上限です。減額は無制限とされています。減額は無制限なので年俸調停の申請は不可能です。これは複数球団による過度な入札競争を防止するためとされています。しかしながら契約年数はインセンティブ契約(出来高払い)、2年目以降の年俸の上昇に制約はありません。ところがよくニュースでは「大型FA契約!4年20億円」などと報道されますよね…?
年俸2億円の選手が、4年20億円の契約を結んだとして解説します。
初年度 | 前年の2億円+契約金1億円(翌シーズンの年俸の半額が上限。残留FAの場合は上限なし)+簡単に達成できるインセンティブ契約で2億円 |
2年目〜4年目 | 5億円 |
上記のようにしてしまえばいいわけです。
またFA規約第7条で「特別な事情をコミッショナーに文書で申請し、コミッショナーがこれを認めた場合」は制限を超えた金額で契約することが可能です。2016年に横浜DeNAベイスターズから読売ジャイアンツに移籍した山口俊投手が良い例です。当初は推定年俸8000万と前年度の据え置きで発表されていましたが、実際はコミッショナーから認可が降りたため推定年俸2億5000万円程度で契約していたことが発覚しました。どのようにでもできるのが実情だと言えます。
(6)獲得した選手によっては移籍に関わる補償が発生する
FA権を行使した選手を獲得して契約を結んだ時点で終了とはなりません。獲得した選手のランクによっては金銭、もしくは人的補償を行う必要があります。以下の通りです。
Aランク | Bランク | Cランク | |
人的補償なし | 旧年俸の0.8倍の金銭 (2度目以降のFAでは旧年俸の0.4倍の金銭) |
旧年俸の0.6倍の金銭 (2度目以降のFAでは旧年俸の0.3倍の金銭) |
補償不要 |
人的補償あり | “獲得制限外の選手1名+旧年俸の0.5倍の金銭 (2度目以降のFAでは獲得制限外の選手1名+旧年俸の0.25倍の金銭) |
獲得制限外の選手1名+旧年俸の0.4倍の金銭 (2度目以降のFAでは獲得制限外の選手1名+旧年俸の0.2倍の金銭) |
補償不要 |
ランクの決定方法は以下の通りです。
Aランク | 助っ人外国人選手を抜いた日本人選手年俸の上位3位 |
Bランク | 4位から10位 |
Cランク | 11位以下 |
(7)海外FAにおける補償など
基本的にここまで紹介してきた制約は生じません。ただし例外も存在します。海外FA宣言をした年の翌々年の11月30日までにNPBのいずれかの球団と契約をせずに、12月1日以降にNPBのいずれかの球団と契約した場合は例えば補償対象選手だったとしても補償に必要がありません。一見、何の問題もなさそうですが、この制度が悲劇を引き起こした場合も…。
小宮山悟さんが上記のルールの被害者になってしまい1シーズン棒に振る羽目になってしまいました。2001年末に横浜ベイスターズからFA宣言して2002年はMLBのメッツでプレーしました。同シーズン限りで退団したため小宮山さんは上記の規定に引っかかったためNPBの11球団から敬遠されていしまい、しかも前球団の横浜ベイスターズにも獲得を見送られてしまいました。結果、20003年の1シーズンを棒に振ってしまい、2004年に千葉ロッテマリーンズに復帰するという異常事態になりました。