幼少期の怪我の予防はなぜ必要なのか。肘痛予防の啓発について考える




野球肘。私自身小学5年生の時に発症していますが、多くの人が経験あるのではないでしょうか。
その原因は①投げすぎ②フォームが悪いと言われていると思いますが、なぜここまで警鐘を鳴らしているのでしょうか。今回はその原因をお伝えします。関連記事として、いくつか作成しておりますので参考にしてください。
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(1)幼少期の野球肘の発症率は50%
(2)野球肘の原因
(3)骨端線が閉鎖する時期
(4)大学野球部で肘痛を有する選手の割合
(5)大学野球部で肘痛を有する選手の割合
(6)最後に

(1)幼少期の野球肘の発症率は50%

日本臨床スポーツ医学会が2005年に発表した調査結果では、四国地方を対象として過去13年間、5768人の少年野球選手を対象に行ったところ、野球肘の選手が約50%であるというデータがあります。そのうち、X線検査で骨に異常のある選手は約20%という結果でした。
野球界ではよく知られている、整形外科医の馬見塚尚孝氏によると、少年野球の投手に至っては70%が肘痛を発症しているとのことです。

(2)野球肘の原因

野球肘の原因は前述した通り、①投げすぎ②フォームが悪いことがあげられます。また、野球肘の発症は小学生高学年に発生することがが多いです。理由は身体の構造上にあるのですが、成長期にあたって子供の骨は成長しています。その「成長期に見られる骨が成長するために必要な成長軟骨」(骨端線)の部位に、ストレスがかかると痛みを生じることが多いです。
特にこの骨端線は力学的負荷に弱く、外傷や障害が起こりやすくなるようなので、投げすぎやフォームが悪いと過度なストレスが肘にかかり、痛みが出るとのことです。

(3)骨端線が閉鎖する時期

選手の成長過程にもよりますが、骨端線が閉鎖するのは骨年齢が男子が17歳以上、女子が15歳以上と言われています。こちら、骨年齢なので、各々の成長スピードによって違いますが、身長の伸びが止まるタイミングがおおよそ骨端線が閉鎖するタイミングです。レントゲンを見ると明らかなのですが、イメージで覚えておいていただけると幸いです。

(4)大学野球部で肘痛を有する選手の割合

馬見塚尚孝氏のデータによると、大学野球部で肘痛を有する選手は、既往歴ありが85.7% 既往歴なしが2%と25倍の差が出ています。
このことからも、幼少期の野球肘の発症は将来の肘痛のリスクを高めることが明らかであり、そのリスクを減らすためにも、投球制限や正しい投げ方を覚えることが重要となってきます。

(5)野球肘を経験した経緯から

私自身、小学5年生で野球肘を発症してから、練習の強度が上がる度に肘痛になることが多かったです。高校野球、大学野球とノースロー調整を入れながら、練習・試合に臨んでいた経緯があります。
子どもは自分では気づかないうちに無理をしてしまいます。こういった情報を知っていれば、もしかしたら野球肘にならなかったかもしれません。

(6)最後に

野球選手として夢を叶えるために、成長していくには、「怪我をしない体づくり」が大前提としてあります。練習ができない期間は自分自身の経験からも、歯がゆく、寂しい気持ちになります。
一番大切なのは選手が伸び伸び楽しくできる環境を整えていくこと。そのために私自身も選手たちの怪我のリスクを考え、知識を伝えながら指導していきたいと思います。